2016年8月3日水曜日

イラストレーションを発注する企業様とご担当の皆様へ

いつも「イラストレーターズ通信」をご利用いただいていることに、心から感謝しています。
私たちは、よりたくさんの人々がイラストレーションを楽しみ、心豊かに暮らす助けとなることを願っています。
そして、商品やサービスにイラストレーションという付加価値をプラスすることで、すべてのクライアント様に喜んでいただくことを目指しています。

しかし幾つかお願いもございます。
長くなりますが目を通していただけるととても嬉しいです。

イラストレーターの紹介や仲介

大変申し訳ないのですが、当団体ではイラストレーターの紹介や仲介はお引き受けしいません。
当団体は、イラストレーターの森流一郎が個人で運営しております。 
常に手がいっぱいで、そうした依頼に応じる余裕がございません 。 
お仕事のご依頼やお問い合わせは、掲載されている各会員の連絡先に直接お願いしています。  


サービス・事業・コンペ・イベント・展覧会などの会員への紹介

何らかのサービス・事業・コンペ・イベント・展覧会などを会員に紹介してほしいというご連絡をいただくことも少なくありません。 
大変申し訳ないのですが、ご連絡は各会員一人一人に直接お願いします。

ご依頼の際は 「イラストレーターズ通信を見ました」とお伝えください

会員イラストレーターにご連絡いただく際は「イラストレーターズ通信を見ました」とお伝えいただけると大変ありがたいです。
この「イラストレーターズ通信」が会員の役に立てているかどうかは、とても大事なことだからです。 
お伝えいただいても、仲介手数料が発生することは、決してありません。

著作権譲渡について 

2011年頃から、著作権譲渡を求めてくる企業や団体が増えてきました。
大変申し訳ないのですが、当団体の会員は、原則として、著作権譲渡には応じておりません。
どうしても著作権譲渡するとなると、ギャランティがかなり高額になります。
イラストレーションの料金は制作にかかった労力の代金ではなく、使用料だからです。 
たとえば、ミッキーマウスのキャラクターを使用するとしましょう。 ディズニーに支払うお金は、その絵を描いた労力の代金でしょうか? 違いますよね?
その絵(またはキャラクター)を使う代金(使用料)です。
そのことは、イラストレーションの作者がウォルト・ディズニーであっても日本のイラストレーターであっても変わらないのです。
私たちイラストレーターは、絵を描いた労力への対価をいただいているのではなく、イラストレーションの使用料をいただいて食べているのです。
多くの媒体で無限に使用可能な権利を使用期限なしで販売するとなると、その分高い使用料となってしまいます。 
例えば、雑誌の仕事で数千円のギャランティで、出版社に著作権譲渡したとしましょう。
そうなると、もうそのイラストレーションはその出版社のものです。 
その雑誌の記事が書籍化されても、カバーに使われても、イラストレーターは追加のお金をもらえなくなります。
書籍カバーのイラストレーションのギャランティは10万円前後が相場ですが、イラストレーターはその使用料をいただけないことになります。 
さらに、それがポスターになっていても、テレビCMがどんどん流れたとしてもです。
そして世界中で翻訳され、映画化されても、、、
 
ある日気がつくと、その出版社のシンボルやキャラクターになっている可能性もあります。(まずありえない話ですが、それも可能な権利を買い取ることが著作権譲渡だということです) 
おそらく、それほどいろいろと使うことはないと思います。それならば、それほど広く使える権利を買い取らずにお願いできないでしょうか? 
著作権譲渡ではなく、それが使用される範囲をあらかじめ定めて、その範囲内での使用許諾で契約していただけるとありがたいです。例えば、「電子書籍、電子書籍の販売ページ、ネット上の電子書籍の宣伝・広告への流用代を含む」といった形で条件を明確に定めて欲しいのです。
様々な媒体で使われるのであれば、その流用代を若干プラスしてギャランティをお支払願います。
「使用範囲がわからない、今予定していないことにまた使う可能性もある。その度に使用許諾を取るのは手間がかかりすぎるし、非効率的だ」という考えもあるでしょう。
新たな2次使用が決まってから一つ一つ使用許諾を取るのは、確かに大変です。
では、ミッキーマウスのイラストレーションを使う書籍を出すとして、「今後使用範囲が広がるかもしれないから、著作権を買い取っておこう」と考えるでしょうか?  
企業様にとっては、効率を上げること、経費を削減することは大事だと思います。
しかし、コンプライアンス(企業倫理)も忘れないで欲しいのです。
たった数千円とか数万円のお金で無限に使える権利を売ってしまっては、イラストレーター側の損害があまりにも大きいこと知っていただけると嬉しいです。  

そして、広告のイラストレーションについても説明させてください。
 広告では、バッティングは原則NGです。
つまり、イラストレーターがあるクライアントに著作権を譲渡したら、そのライバル企業では一生仕事ができない可能性があるのです。
著作権譲渡したのが化粧品メーカだと思っていたのに、じつはグループ企業が自動車を製造販売をしていたら、知らないうちに自動車のポスターに使われることも可能性としてはあります。(グループ企業への著作権譲渡を求める契約書を提示されたケースも少なくありません) 
一旦著作権を手放すと、イラストレーターはその作品がどこでどう使われるか管理できません。
会社は吸収・合併 ・買収されることもあります。作品の著作権を将来どこが管理することになるのか、誰にもわかりません。
著作権は、さらなる譲渡も可能です。 
さらなる譲渡の意図をもって著作権を買い取るはずはありませんが、やがて担当者が変わり、経営者も変わった先の未来のことは誰にもわかりません 。
著作権譲渡の仕事をたくさんしているうちに、いつか知らないところで、自分の意思で受けた広告の仕事とバッティングしてしまう可能性も否定できません。 
そうなると、イラストレーターは多額の賠償金を支払わなければならないかもしれません。
いやそれは、企業様にとっても大きなリスクとなるでしょう。
著作権譲渡が当たり前の世の中になったら、どのイラストレーターに依頼しても、思いがけず、ライバル企業と同じイラストレーターの作品となってしまう可能性があるのですから。 
イラストレーターにとっては、著作権譲渡をするたびに、仕事をする場を失っていくことになります。
イラストレーションの作風と作者名が切り離せない関係にある以上、著作権譲渡が広がると、いずれイラストレーターは食べていけない職業になる可能性があるのです。 
例えばご自身のこととして考えてみてください。
もしも、1ヶ月分(あるいは1年分)の給料で、一生働かなくてはならないという会社があったとしたら、入社しますか?
他の会社に入社しますか?
ところが、世間の会社がみんなそうなって、入社するところがなくなってしまったら、、、
あなたは食べていけなくなります。
現実にそんな会社があれば、ブラックとして社会問題となるでしょう。
それがイラストレーターに対しては、「著作権譲渡」として安易に行われているのです。
このままではイラストレーターは食べていけなくなります。
効率や経費削減のために、私たちイラストレーターを犠牲にしないよう配慮をいただけるとありがたいです。
広告のイラストレーションで幅広く展開するので使用媒体がどこまで広がるかわからない、という場合も、
「その商品の広告(または、キャンペーンやイベント等)に限って、使用媒体を定めず使い放題、ただし使用期間を定める。」という契約はいかがでしょうか?
こうすれば予定外の媒体にも使いたくなった場合に、使用許諾を改めて取る必要はないでしょう。
ただ、この場合は幅広く使われるわけですから、その分のギャランティもプラスしてくださいますようお願いします。

キャラクターデザインの場合は、著作権譲渡を求められることが多いようです。
しかし、広告同様、イラストレーターにとっては、そのライバル企業では一生仕事はできなくなります。思いがけないところでバッティングする可能性もあります。
企業様とイラストレーターで著作権を共有する。 著作人格権はイラストレーターに残し、改変や他のポーズが必要な際はその下のイラストレーターに依頼する。といった方法を考えていただけると嬉しいです 。

ミッキーマウスの著作権を買い取るとして、その金額がいくらになるか、少し想像してみてください。
それは、今後ミッキーマウスがディズニー社にもたらすであろうお金に匹敵する金額となるでしょう。
具体的なイメージがわかないほど、莫大な金額ですよね。
私たちイラストレーターとはその作品価値が違いすぎて全く同じようには考えられないかもしれません。
しかし著作権譲渡は、そのイラストレーターのその後の人生にもたらすであろうお金を制限するのです。
イラストレーターにとっては、一枚の作品の著作権にも、大きな価値があるのです。
そのことは忘れないで欲しいのです。
もう一度言わせてください。
このまま著作権譲渡が広がると、近い将来、イラストレーターは食べていけなくなります。
私たちが職業としてのイラストレーター最後の世代となるかのしれないと危機感を持っています。
この社会からイラストレーターがいなくなれば、困るのは出版社をはじめとする企業の皆様ではないでしょうか?
確かにアマチュアのイラストレーターがたくさん出てきましたが、やはりちゃんとしたお仕事の相手としてプロのイラストレーターは必要だと考えます。
浮世絵が盛んだった江戸時代、日本は世界でも稀な大衆文化の国でした。
そのころヨーロッパで絵といえば一部の裕福層や教会のもの、一般大衆がカラーの絵を購入することなんてなかったようです。
日本では普通の庶民がカラーの浮世絵を購入して楽しんでいました。
それが今の日本の漫画やイラストレーションといった豊かな大衆文化につながっていきます。
世界に誇るべき日本の大衆文化の灯を守り、未来につなげたいと願っています。

なおーー 
公正取引委員会の「コンテンツ取引と下請法」パンフレット(http://www.jftc.go.jp/houdou/panfu.files/contentspamph.pdf)には、親事業者の主な禁止行為の例として、「下請事業者と著作権の対価にかかる十 分な協議を行わず、通常の対価を大幅に 下回る代金の額を一方的に定める。(買い叩き)」と書かれています。 
また、このパンフレットには、「優越的地位の乱用として独占禁止法上問題となる行為」として、「 情報成果物に係る権利等の一方的取り扱い」と書かれています。 



無料や激安のお仕事

無料や激安のお仕事もイラストレーションの文化を衰退させる可能性があるため、当団体会員はお受けしておりません。
公正取引委員会の「コンテンツ取引と下請法」パンフレット(http://www.jftc.go.jp/houdou/panfu.files/contentspamph.pdf)には、親事業者の主な禁止行為の例として、「同種・類似のコンテンツの一般的な対価 に 比 べ、著しく低い金額を親事業者が一方的に定めること。(買い叩き)」と書かれています。 
また、このパンフレットには、「優越的地位の乱用として独占禁止法上問題となる行為」として、「 著しく低い対価の設定」と書かれています。 

流用・2次使用

イラストレーションの流用・2次使用には、事前にご依頼のイラストレーターから使用許諾を得る必要がございます。 


諸条件提示のお願い

イラストレーション発注時は、作業が始まる前に、諸条件を明確にした書面を交付願います。
公正取引委員会の「コンテンツ取引と下請法」パンフレットには、親事業者の義務として「コンテンツの作成委託をするときは、必ず発注書面を交付する必要があります」と書かれています。 
会員からは、「お仕事確認書」への記入をお願いすることがございます。
お仕事確認書:https://db.tt/DyGFoJvj


参考資料

公正取引委員会の「コンテンツ取引と下請法」パンフレット
http://www.jftc.go.jp/houdou/panfu.files/contentspamph.pdf
公正取引委員会による「優越的地位の濫用」パンフレットhttp://www.jftc.go.jp/houdou/panfu.files/yuuetsu.pdf 

公正取引委員会による「消費税の転嫁拒否に関する主な違反事例」パンフレット
http://www.jftc.go.jp/houdou/panfu.html#cmsshitauke 

悪質な場合、中小企業庁や公正取引委員会、あるいは団体顧問弁護士に相談させていただきます。 



プロフェッショナル・イラストレーター集団「イラストレーターズ通信」主宰・理事 森流一郎