2012年8月13日月曜日

イラストレーターの仕事について考える


お盆です。
そんなこととは関係なく、また熱を出して寝込んでいます。
夏風邪をひいた記憶は、少なくともここ20年ぐらいありません。
体力がなくなってきたことを痛感しています。
布団にもぐり込み、熱でぼんやりした頭で、イラストレーターの仕事について考えていました。

いつだったかーー
世界的な現代美術の作家が小学校に来て作品制作をするドキュメントをテレビでやっていました。
番組の終わりの方で、質問コーナーがあり作家が答えていました。
ある一人の小学生が、こんな問いかけをしました。
「これって何の役に立つんですか?」
美術家にとって究極の質問かもしれません。
しかし、その作家は少しもうろたえることなく、こう答えました。
「役に立たないものにこそ、本当に大事なものがあるんだよ」

たとえば、小説は文字で成り立っています。
イラストレーションは役に立たない、なくてもいい、と出版社が考えたとしましょう。
書籍のカバーにひとつもイラストレーションがなく文字だけになったら……
書店に入ったときの、あのときめきが半減するのではないでしょうか?
効率主義が行き過ぎると、無味乾燥で詰まらない世の中になります。
本当に大事なものは、一見無駄に思えるところにあるのです。

私たちイラストレーターの仕事は、現代美術ほど高尚ではないかもしれません。
でもよりたくさんの大衆に向けて、ちょっとした何かをお届けするエンターティメントです。
そのイラストレーションを見た人が、ちょっと幸せになれたり、ときめいたり、「かわいい」と思えたり、それだけのことですが……
世の中にとって、とても大事な「小さな魔法」だと思っています。
イラストレーターは、きっと、ほんのちょっとした魔法使いなのです。

イラストレーターの皆さん、ちょっとした何かで、世の中を照らしていこうではないですか。
より幸せな世の中になることを願って。
(森 流一郎)